日本共産党の笠井亮議員は7日の衆院予算委員会で、能登半島地震で深刻なトラブルが発生した北陸電力志賀原発をめぐり、最悪の事態を想定し、原発ゼロを決断すべきだと迫りました。岸田文雄首相は、「安全神話」に固執し、原発推進を続ける姿勢を示しました。
「想定外」のトラブル
笠井氏は、志賀原発について、「原子力施設の安全機能に異常はないと承知している」「1、2号機とも運転していない」と繰り返している岸田首相に対し、「最悪の事態を想定すべきだ」と批判。今回の地震で変圧器損傷・油漏れが発生し、外部電源が一部使えず、「想定外」のトラブルが続出したと指摘し、次のように迫りました。
笠井 今回より強い地震で震源地が原発立地の直下か近傍だったり、原発が運転していたりした場合、福島第1原発のような過酷事故にならないといえるか。
首相 原子力規制委員会の新規制基準には、万が一過酷な事故が発生した場合への対応も含まれている。
笠井 「過酷事故にならないと断言できるか」と聞いたが、答えていない。
笠井氏は、原子炉が稼働していなくても電源を失えば、使用済み燃料プールの水が冷却できなくなり火災を起こし、放射性物質が飛散する恐れがあると指摘。さらに、「原発が動いていたら最悪の場合、原子炉の燃料がメルトダウンし、使用済み燃料は火災を起こしてしまう恐れ、可能性があるのではないか」と追及しました。規制委の山中伸介委員長は「可能性は否定しない」と認めました。
笠井氏は、福島第1原発事故の際、当時の近藤駿介・原子力委員会委員長が示した「最悪のシナリオ」では、事態を収束させられず、原子炉や燃料プールから放射性物質の放出が続けば、最終的には250キロ圏(北は盛岡市、西は新潟市、南は東京を越え横浜市)で移住が必要となり、汚染の自然消滅に数十年かかる「東日本壊滅」ともいうべき被害が見積もられていたと指摘。「地震や津波の場所、規模によって最悪の過酷事故になる恐れが十分にある。福島事故の再来など絶対にあってはならない」と訴えました。
孤立状態で避難不可
笠井氏は、今回の地震では、震源域が想定範囲を超えており、志賀原発に近い「富来川(ときがわ)南岸断層」に沿って地表のずれやたわみが長さ3キロ以上も確認されたと指摘。「立地に根本的問題があることが明らかになった」と迫りました。
笠井 こんなリスクの高い場所に原発はありえない。
首相 断層の活動性評価は今回の知見も考慮し、厳正に審査されると聞いている。
笠井 原子力規制委員会は影響調査には年単位かかるとしている。その間に断層が動いて、地震や津波が来ない保証はない。
笠井氏は震源地の近くに珠洲原発建設計画があり、地元住民から「住民反対で止めてよかった」との声が上がっていると紹介し、今回の地震で原発予定地付近の海岸線が数メートル隆起し、住宅の大半が壊れ、孤立状態になったと指摘。「原発があれば大変なことになっていた。原発に100%の安全はなく、事故は起きるという最悪の事態の想定が大前提だ。大丈夫だと言うなら、それは新たな『安全神話』だ」と批判しました。
笠井氏は、電源喪失や活動層・隆起の危険、実効性のない避難計画の問題などを挙げ、「志賀原発も、使用済み燃料プールから大量の水があふれた新潟県の柏崎刈羽原発も廃炉しかない」と追及。岸田首相は「安全確保に影響のある問題は承知してない」と述べるだけでした。
自民へ献金70億円超
被災者から「地震や津波は止められないが原発は止められる」と声が上がるのに、なぜ政府は廃炉にしないのか―。笠井氏はその背景に「原発政策とカネ」があると告発しました。
笠井氏は、原子力関連企業などでつくる日本原子力産業協会から自民党の政治資金団体「国民政治協会」への献金額は、10年間で70億円超に上ると指摘(グラフ)。原子力産業協会は原発の早期再稼働や新増設などを要求しており、「多額献金は原発政策のカネによる売買で、政治をゆがめている。原発回帰の要求を丸のみし、国民の命と健康、財産より原発優先など許されない」と批判しました。
その上で、同協会の会員企業には大手商社や原発メーカー、鉄鋼会社、ゼネコン、銀行など約400社あり、「(献金の)70億円以外にも『裏金』が自民党に流れているのではないか」と追及しました。
笠井 2013年から22年に、自民党派閥と議員の政治資金パーティー券を購入したのは何社でいくらか。
首相 整理した資料は保有しておらず、回答は困難だ。
笠井氏は、調査を要求した上で「地震・津波国の日本での原発稼働は極めて危険だと示された」と指摘。「福島第1原発事故はなお続き、今も数万人が避難を余儀なくされ、収束の見通しも立たない。原発ゼロこそ決断すべきだ」と強調しました。
【「しんぶん赤旗」2024年2月8日付】