立法府として、海外の事情を調査する国会議員の海外派遣。日本共産党の国会議員がさまざまなテーマで参加したうち、気候危機、核廃棄物処理、最賃制度などの課題に関わった、笠井亮、田村貴昭両衆院議員と吉良よし子参院議員の調査を紹介します。
気候危機への本気度違う
笠井議員
日本共産党の笠井亮衆院議員は8月20~26日に再生エネと半導体をテーマに衆議院の欧州調査議員団の一員としてデンマーク、オランダ、ベルギー、ドイツを訪問しました。
各国の政府、国会、企業など息つく暇もない視察と意見交換で、もちろん「エッフェル塔」など論外。他党議員から「大丈夫。真面目な共産党がいるから」の言葉も聞かれたといいます。
全体を通じて、気候危機にたいする欧州各国と日本では政府の本気度の違いが明らかになりました。訪問した先々で自民党の議員からも「再エネがすごい」の声が上がりました。
再エネ100%へ野心的CO2削減目標と前倒しなど、15年前の党調査で訪れた時以上に、どの国も地球沸騰化とウクライナ侵略に伴うエネルギー確保に真剣。陸上・海上に林立する風車が印象に残ったと笠井氏は言います。
「気候変動・再エネ先進国」で2030年に100%再エネをめざすデンマークで、視察した風力発電施設は、権益の50%を一般の市民投資家からなる共同組合が所有しているとの説明。市民が参加することで立地条件などさまざまな問題での市民の合意を得て進められているとのことです。
エネルギー庁では、専門家3人がパワーポイントで再エネの意義を語り、日本地図も使い「条件が違っても日本で同じように十分できる」と“指南”する場面もあったとのこと。
日本の原発回帰を言いだせない与党議員の「オランダでは新たな原発建設の動きと聞くが」の問いへの答えは、「やろうとする人たちはいますがね」。
日本政府が原発に頼らず、本腰で再エネを支援し、再び世界の先進をめざすべき、これが笠井氏の実感です。
訪問先はどこも「自転車天国」。朝の通勤・通学時間に自転車専用道路を老若男女が疾走します。トヨタ関連で駐在の方も「実は私も自転車通勤です」と。
笠井氏は「外交は政府だけのものではない。国会にはチェックする役割がある。議員外交で、各国のいいところは学び、国会で法案を提案していく。本来議員がやらなければいけないことです」と海外調査の意義を語ります。
女性長官 地熱技術世界に
吉良議員
吉良よし子参院議員は9月3~10日に参議院の資源エネルギー調査会のメンバーとしてアイスランドとドイツを視察しました。
ドイツは脱原発を決め、4月からそのための施策を実施しています。その一つが、これまでの放射性廃棄物の処分です。管轄する連邦放射性廃棄物機関を視察しました。責任者は、「われわれは、ベターな場所ではなくて、科学的にベストな場所を選ぶ」と、強調していました。
さらに、選定の過程では、会議の場を設けて議論をするなど住民や専門家とのコミュニケーションをとる仕組みをつくり、定期的な住民との対話を続けていることが印象的だったと吉良氏は語ります。
アイスランドは、地熱発電を中心に、電力の9割を再エネでまかなっています。国家エネルギー庁の長官はアイスランドの地熱技術を世界に広げたいと意欲を示していました。
同長官は40代の女性。国家の重要政策のポストへの女性の起用は、ジェンダー平等先進国のアイスランドを象徴しています。
吉良氏は「海外の脱原発の取り組みや再エネへの取り組みを国民にも知っていただきたい」と述べ、「JCPサポーターまつり2023」(22日、東京・都立青山公園南地区・多目的広場)でも海外視察報告のコーナーをつくっていきたいと言います。
全国一律最賃 自民も理解
田村貴昭議員
田村貴昭衆院議員は8月26~31日に衆議院の財務金融委員会の視察団の一員として、ドイツとイギリスなどを訪問し、最低賃金制度や消費税(付加価値税)について視察を行いました。5日間の日程で19カ所を訪問するハードなスケジュールでした。
ドイツでは、ドイツ労働者雇用連盟という企業の団体に視察に行きました。日本では地域ごとに分かれている最低賃金をなぜドイツは一本化しているかとの質問に、「一律にしているのは正しいと思う。州ごとに最賃を決めれば話が終わらない」。最賃が払えない事業者に対して、どうすればいいとの質問に、「最賃は労働の対価の最低額を定めたもの」「生活は社会保障のシステムでまかなうもの」と回答しました。ドイツでは国公立校の学費は大学院まで無料です。視察を通して自民党議員の全国一律制への理解が深まりました。
英国の付加価値税には、食料品、水道水(家庭用)、新聞、雑誌、国内旅客輸送、医薬品など広範囲に「ゼロ税率」が適用されています。視察先の日本企業の役員が「税率が上下しても、(国民は)気付かない」との発言にも納得したと田村氏は言います。
田村氏は「臨時国会では、物価高騰対策、国民の生活困窮の問題が議論になります。視察での知見は、国民が安心できる政治を実現するための論戦に直結します」と語ります。
【「しんぶん赤旗」2023年10月1日付】