岸田政権による「原発回帰」への大転換の撤回を求める
日本共産党原発・気候変動・エネルギー問題対策委員会責任者 笠井 亮
一、岸田首相を議長とするグリーントランスフォーメーション(GX)実行会議は12月22日、新たな原発推進政策をふくむ基本方針を決めました。これは、政府自身が「可能な限り原発依存度を低減する」としてきた立場から、原発再稼働の加速、老朽原発の運転期間延長と新規原発建設という原発推進への大転換にほかなりません。
東京電力・福島第1原発事故の反省も教訓も投げ捨てる、新たな「安全神話」そのものであり、このような「原発回帰」は断じて許されません。
一、日本社会を将来にわたり原発に縛りつけることは、世界有数の地震・津波国にいる国民の生命と財産、経済・社会を危険にさらすものです。いまなお原発事故で苦しむ多くの人々、「原発ゼロの日本」を望む国民多数の思いを踏みにじるものにほかなりません。こうした重大問題を、国民的議論も国会での論議も避け、国政選挙で問うこともなく、首相の号令一下、参院選から5カ月のわずか5回の会議で、財界や原発業界・大手電力会社の要求を丸のみし、「結論ありき」で勝手に決めるなど、到底認められません。このような決定は、直ちに撤回するよう強く求めます。
一、政府は、電力の安定供給、脱炭素などを原発最大限活用の口実としていますが、一片の道理もありません。限られた時間内の需給逼迫(ひっぱく)に必要なのは、需要の急増急減に対応できる柔軟な電源であり、出力調整ができない原発ほど適さない電源はありません。すでにEUで実施されている大口需要の時間調整(デマンドレスポンス)や蓄電システム強化や省エネルギーでこそ対応すべきです。2030年までに二酸化炭素排出量を世界で半減させることが求められているとき、2030年代以降という新設原発では全く間に合いません。
一、「原発回帰」は、再生可能エネルギーの普及・拡大の妨げとなり、気候危機を打開し持続可能な社会をめざすうえでも重大な逆流となります。使用済み核燃料など処分困難な「核のゴミ」が増え続け、将来世代への負の遺産を増やすことにもなります。日本の希望ある未来のために、原発ではなく、省エネとともに再エネの全面的な活用にこそ尽力すべきです。
福島第1原発事故がなかったかのように「原発回帰」への道をつきすすむ岸田政権による独断政治を終わらせ、何より国民の命と安全を守るための国民的な共同を心からよびかけます。【「しんぶん赤旗」2022年12月23日付】