笠井亮議員の2020年5月22日の衆院経済産業委員会での質問が記事中で紹介されています。
託送料金ってご存知でしょうか。電気を運ぶための電線使用料です。電気料金の3~4割を占めていますが、この託送料金に、原発事故の賠償負担金と廃炉費用を上乗せするしくみが、10月から始まりました。どんな仕組みなのか、影響はどうなるのかを見てみました。
大手電力会社が発電した電気は、小売電気事業者に販売されます。小売電気事業者は、電気を送配電網を通じて消費者に届けます。消費者は小売電気事業者に電気料金を支払います。小売電気事業者は支払われた電気料金から送配電網を使用した費用を「託送料金」として送配電事業者に支払います。
しかし、この託送料金には、送配電網の維持費用に加えて、使用済み燃料再処理費用や電源開発促進税が含まれています。これに加えて福島第一原発事故の賠償費用と廃炉円滑化負担金を上乗せします。その上乗せ分はすべて消費者が支払う電気料金に含めています。
事業者責任を消費者負担に
多くの環境・自然保護団体でつくるeシフト(脱原発・新しいエネルギー政策を実現する会)は、9月に消費者庁と内閣府消費者委員会に「賠償負担金・廃炉円滑化負担金の託送料金への参入(ママ)に関する要請」をしました。
要請は「本来東京電力および原子力事業者が責任をとり負担すべき費用を消費者が負担するしくみであり大きな問題があります」と指摘。①上乗せは見直すべき②消費者負担がなければ支えられない原子力事業自体を見直すべきーーなどを求めています。
託送料金への「上乗せ」が始まった直後の10月15日には、新電力会社の「グリーンコープでんき」(福岡市博多区)が、国を相手取って託送料金認可取り消しを求める訴訟を福岡地方裁判所に起こしました。
認可取消訴訟 法の委託逸脱
訴状によると、九州電力による託送料金への上乗せ申請を経済産業省は9月4日に認可しました。しかし、同省が認可の根拠とした省令改正による、賠償負担金、廃炉円滑化負担金の支払い義務規定は「電気事業法に存在しない」と指摘。また「賠償負担金や廃炉円滑化負担金は、送配電事業を営むために必要な費用ではなく、電気事業法でいう『能率的な経営の下における適正な原価』に該当しない」とのべ、法が省令に委任できる範囲を逸脱しているとしています。
原発コスト負担とんでもない
上乗せ実施前の5月22日の衆院経済産業委員会で日本共産党の笠井亮議員は、託送料金のあり方について政府をただしました。
笠井さんは託送料金に原発固有のコストが含まれていることを指摘。「電力自由化といいながら、託送料金で原発コストを負担させるというのはとんでもない話で、原発コストは、託送料金から外して見える化すべきではないか」と求めました。梶山弘志経産相は「不適切であるとのご指摘はあたらない」と答弁。笠井さんは「当たらないといえば済む話ではない」と批判しました。
また、託送料金に原発コストを含ませるのは「再生可能エネルギー100%の新電力を選択している利用者にも原発コストを負担させることになる」と指摘しました。
11月11日、再エネへの転換を進めるパワーシフトキャンペーン運営委員会がオンラインセミナー「託送料金と訴訟の取り組み」を開きました。託送料金認可取消訴訟を起こしたグリーンコープでんきの松田節子さんが、訴訟に至る取り組みを報告しました。
「このままでは膨大なツケが未来の子どもたちに負わされてしまう。こんなおかしいことがまかり通れば、民主主義は瓦解する。訴訟を通して原発事故の責任を明確にし、原発廃炉を適切にすすめるようにしたい。立法・国会で決めることを省令で勝手にきめないという、民主主義の大原則をまもらせたい」
【「しんぶん赤旗」2020年11月30日付】