トランプ米大統領が「米国第一」を打ち出すもとで、安倍政権の「日米同盟第一主義」の危険性が日々浮き彫りになっています。日本共産党の笠井亮政策委員長は衆院予算委員会(2日)で“米国追随外交″からの脱却を迫りました。
入国禁止「大統領令」/首相、天まで持ち上げ
難民の受け入れ拒否、中東・アフリカ7カ国の一般市民の入国禁止…。トランプ米大統領が「テロ対策」の名目で発した大統領令が、世界各地で批判と混乱を招いています。「難民の入国制限、特定の宗教や国籍者に対する入国制限は、国際的な人権・人道法に反するもので、テロ根絶の国際的とりくみに否定的な影響を与える」(笠井氏)ものです。
各国の首脳は大統領令に対し次々と批判や不同意を表明しています。米国の「内政事項」ではなく、「テロ対策の名で特定の宗教や特定の国の市民を排除している国際問題」(笠井氏)だからです。
他方、安倍晋三首相は国会で「米国の内政事項であり、コメントは差し控えたい」と繰り返し述べています。
ところが安倍首相は、入国禁止の大統領令が出された直後のトランプ氏との電話会談(1月28日深夜)でこう述べています。「トランプ大統領のリーダーシップによって、米国がより一層偉大な国になることを期待する」。笠井氏は「コメントしないというがコメントしているではないか」と矛盾を追及。「大統領令が出たあとの発言であり、入国制限措置を含め評価の言葉になる」「トランプ大統領を天まで持ち上げたのは日本の首相ぐらいだ」と厳しく指摘しました。
テロ対策に逆行
今回の措置は「テロ対策」のうえでも深刻な影響が生じます。2006年の国連総会で、全会一致で採択された「国連対テログローバル戦略」は「すべての人の人権と法の支配の促進・擁護がこの戦略に不可欠」だと明記し、「テロをいかなる宗教、文明、民族グループとも結びつけてはならない」とのべています。
国際的なテロ根絶の大原則に真っ向から反する―。笠井氏は「テロリストに新たな口実を与え、テロ根絶にとって深刻な逆流をつくり出している。大統領令の撤回を求めるべきだ」と強く迫りました。しかし、安倍首相の答弁は「内政問題だ」の一点張り。米国にモノ言えぬ姿勢だけが際立ちました。
米軍駐留経費負担率/日本75%世界でも突出
「米国第一」を宣言するトランプ大統領は、自国の利益を、覇権主義的に押し付けてくる危険があります。その一つに、在日米軍駐留経費などの負担増を求める危険があります。
増額に応じるのか―。笠井氏の問いに安倍首相は「駐留経費は日米間で適切な分担が図られるべきだ」とのべるだけで、否定しません。
在日米軍駐留経費負担(思いやり予算)は第2次安倍政権発足後の5年で計9474億円。負担割合は74・5%にも達しています(別表)。防衛省がまとめた「米軍の安全保障政策/日米同盟」(13年)と題する内部文書も「他の米軍接受国と比べ、我が国の負担率は突出」していると記すほどです。共同通信の世論調査(昨年11月)では「負担を増やす必要はない」が86・1%にのぼっています。
笠井氏は「『日米同盟』を絶対視して、世界で異常に突出した駐留経費負担を続けるのではなく、(米国の)要求はきっぱりと拒否すべきだ」と迫りました。
オスプレイ飛行容認/防衛相、理由説明できず
昨年12月13日、沖縄県名護市で起きたオスプレイ墜落事故―。日本政府は、米軍の調査でも事故原因が特定されていないのに6日後の飛行再開を容認しました。
航空自衛隊トップの杉山良行空幕長は事故3日後の16日の会見で「事実関係が米軍から公開されておらず、具体的な分析はほとんどできていない」とのべていました。同じ日に米軍は“飛行継続″を日本政府に通知しています。米軍の言いなりに飛行再開を認めたことになります。
稲田朋美防衛相は、この指摘に一切答えず、“防衛省の分析と評価″なるものを長々と5分間以上にわたって答弁し議場内は騒然。答弁中に浜田靖一予算委員長が「長い」と5回以上注意を行い、最後には「質問に対して答えてください」と語気を強めました。
笠井氏は「日本国民の命と安全のために真剣に議論している。かみあった議論をしていただきたい」「オスプレイが日本中を飛び回るほど危険なことはない。撤去を強く求める」と迫りました。
【「しんぶん赤旗日曜版」2017年2月12日号】