日本共産党の笠井亮議員は27日の衆院環太平洋連携協定(TPP)特別委員会で、TPPによって医療をはじめあらゆる分野で多国籍企業に有利なルールが押し付けられる危険があることを示し、「経済主権を売り渡してはならない」と主張しました。
笠井氏は、TPPが署名された2月4日に、わざわざ日米両政府が「書簡」を交わし、日本が米国に対して「関連する将来の保健医療制度を含む」事項について「協議する用意がある」と約束したことを指摘。「薬価」「医療機器」「診療報酬」など、日本の医療制度を支えるあらゆる事項が協議対象になるとして、「国民皆保険制度が内側から壊され、空洞化する危険がある」と批判しました。塩崎恭久厚労相は「米国政府の意向を受け入れることを約束したものではない」などの釈明に終始しました。
笠井氏は、「米国の製薬大企業と政府から内政干渉を丸ごと受けかねない規定だ」と厳しく批判。さらに、「TPPの核心の一つ」として、ISDS(投資家対国家紛争解決)条項がもつ重大な問題をただしました。
ISDS条項は、自由貿易協定などを締約した国の企業や投資家が損害を受けたとして、相手国を訴えることのできる仕組みです。
笠井氏は、米国、カナダ、メキシコが結ぶ北米自由貿易協定(NAFTA)では、米国企業がISDS条項を使って提訴した件数が全体の72%と圧倒的多数なうえ、米国政府は外国企業に訴えられても負けたことがないと指摘。「(米国企業が)TPP発効後、ISDS条項を使って、米国の多国籍企業が参入できるように(日本政府を)訴えてくることはないといえるのか」とただしました。
岸田文雄外相は「わが国が提訴されることは考えていない」などと強弁しましたが、笠井氏は、外務省が4月に「国際経済紛争処理室」を設置し、ISDS条項で日本政府が訴えられたときの対策をとっている事実を指摘。「TPPの強行など断じて許されない」と強調しました。
【「しんぶん赤旗」2016年10月28日付】