国民利益に反する/笠井議員
後半国会最大の焦点である環太平洋連携協定(TPP)承認案と関連法案が5日、衆院本会議で審議入りしました。質問に立った日本共産党の笠井亮議員は、「交渉内容や国民へのリアルな影響も明らかにせず、批准に向けてひた走るなど断じて許されない」と、TPPから撤退し、関連法案を廃案にするよう求めました。
笠井氏は、「TPPは国会決議(2013年)に明確に違反する」と二つの問題を指摘しました。
第一に、農産物の重要5項目(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)の3割の品目で関税が撤廃され、コメでも関税ゼロの「特別輸入枠」が新設されたことです。わずかに残った関税も、発効から7年後には、撤廃に向けた協議を約束させられています。
国会決議は、重要5項目の関税撤廃を認めず、「除外」または「再協議」にすることを求めていますから、これは明白な国会決議違反です。そのため、全国の農協組合長の93%が「国会決議が守られていない」と答えているのです。(日本農業新聞1月4日付)
第二は、まったく不十分な情報開示です。国会決議は政府が国民への十分な情報提供、幅広い国民的議論を行うことを求めています。しかし、安倍政権は徹底した秘密交渉を貫き、協定と付属書についても、英文8400ページのうち6000ページ分もの和訳が国会に提出されていません。
国会決議に反するだけでなく、TPPは暮らしと経済のあらゆる分野で、国民の利益と経済主権を多国籍企業に売り渡すものです。農業だけでなく食の安全、医療、雇用、公共事業など多方面に深刻な影響が及びます。
さらに、進出する多国籍企業の利益を保障するため、国民へのあらゆるサービスが規制緩和の対象となります。しかも、緩められた規制を元に戻せない仕組み(ラチェット条項)や、企業・投資家が損害を受けたとして相手国を訴えられる仕組み(ISDS条項)まで盛り込んでいます。
日本は経済格差を拡大するTPPの推進ではなく、アジアと世界で、各国の経済主権、食料主権を尊重しながら、平等・互恵の経済関係を発展させる貿易・投資のルールづくりの先頭にこそ立つべきだ―。こう笠井氏は指摘し、「TPPは徹底審議のうえ、批准でなく撤退を。関連11法案の廃案を強く求める」と強調しました。
答弁した安倍晋三首相は「関税撤廃の例外を確保した」「(TPPの合意内容は)国会決議の趣旨に沿うものだ」などとごまかしました。
【「しんぶん赤旗日曜版」2016年4月10日付】