TPPは、国会決議に明確に違反するものです。
2013年の国会決議は、農産物の重要5項目(コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)は関税撤廃を認めない、「除外」または「再協議」にするとしています。自民党は決議を守ることを国政選挙の公約にしたはずです。
国会決議に違反
ところが、TPPでは、安倍総理自身も「聖域」とした重要5項目のうち3割の品目で関税が撤廃され、コメでも関税ゼロの「特別輸入枠」まで新設されました。わずかに残った関税も、発効7年後には撤廃に向けた協議を約束させられました。これは明白な国会決議違反、公約違反ではありませんか。
国会決議はまた、交渉により収集した情報は国会に速やかに報告し、国民への十分な情報提供、幅広い国民的議論をおこなうことも求めています。ところが、安倍内閣によるTPP交渉は、入り口から出口まで徹底した秘密交渉が貫かれ、日本の参加条件とされた日米2国間の並行協議でも、何が話し合われ、日本が何をどう受け入れたかも分かりません。これも決議違反です。
安倍内閣が、甘利前大臣のもとで秘密裏に進めてきた内容を含め、交渉の全経過を国会と国民に報告することをはじめ、十分な情報開示をおこなうことを強く求めます。
主権を売り渡す
TPPは、暮らしと経済のあらゆる分野で、国民の利益と経済主権を多国籍企業に売り渡すものになっています。
米国を代表する108の多国籍企業、業界団体が名を連ねた「TPPのための米国企業連合」は、米政府に要求書を出し、「例外を設けることは、米国の農業者、製造業者、サービス業者が新しい市場に事業を拡大する機会を制限する」と、もっぱら多国籍企業の利益拡大の立場から日本に市場開放を求めてきました。
これこそ、「TPPの真実」ではありませんか。
農業の関税撤廃をめぐって、安倍政権は「156のタリフラインの関税を維持した」などといいます。しかし、段階的関税削減を含めて82%以上の撤廃は、日豪EPA(経済連携協定)やウルグアイラウンド農業合意をはるかに上回るもので、史上最悪の農業つぶしにほかなりません。
TPPの大きな眼目は、進出する多国籍企業の利益を保障する「非関税措置の撤廃」です。すなわち、あらゆるサービスが規制緩和の対象となり、緩められた規制を元に戻せない仕組みや、企業や投資家が損害を受けたとすればISD(投資家対国家紛争解決)条項を用いて相手国を訴えられる仕組みまで盛り込んでいます。
このもとで、遺伝子組み換え作物や輸入食品の急増で「食の安全」が脅かされかねません。製薬企業が薬価決定に影響力を及ぼして薬価が高止まりし、労働分野では賃金低下、非正規雇用の増加、労働条件の悪化がますます進行するのではありませんか。政府や自治体が発注する建設事業などでは、国際入札の義務により「地産地消」のとりくみができなくなり、地域の仕事が奪われることになりませんか。
将来の保険医療制度などの協議や、日本郵政における保険商品販売など、すでに米国の要求に応えている金融・保険では、TPPをテコに継続的に米国の利害関係者が日本にモノをいえる仕組みを盛り込んでいるではありませんか。
加えて、TPPが発効した途端、協定にもとづく各種委員会が立ち上がり、日本に再交渉を迫る仕組みまで盛り込まれています。
まさに幅広い分野で、今後の国民生活と営業を脅かすことは明白であります。
まやかしの試算
次に、TPPの経済効果についてです。
安倍内閣は、貿易や投資拡大でGDP(国内総生産)を14兆円おし上げる一方、農業への影響は、牛肉、豚肉、乳製品等33品目が1300億円~2100億円の生産減となるだけと、きわめて過小に評価しています。
また、「TPPは80万人もの新しい雇用を生み出す」と吹聴しています。しかし、この80万人は、ある分野で雇用が失われても、労働者は他の分野へ自由に移動できるので、結果として失業は起きないという、まったく現実とかけ離れた想定ではありませんか。
総理。農業への影響、「非関税措置」撤廃への影響について、なぜ責任ある試算を示さないのですか。TPPがもたらす深刻な打撃を「ない」ものと描く、まやかしの「試算」で国民を欺くことは断じて許されません。
抜本的転換こそ
日本が進めるべきは、経済格差を拡大するTPPではありません。国民の懐を温める経済への抜本的転換とともに、アジアと世界で、各国の経済主権・食料主権を尊重しながら、平等・互恵の経済関係を発展させる貿易・投資のルールづくりの先頭にこそ立つべきです。
真の「国益」に反するTPPは、徹底審議のうえ、批准でなく撤退を、関連11法案の廃案を強く求めて質問を終わります。
【「しんぶん赤旗」2016年4月6日付】