2013年末 治安悪化で具体化/中谷防衛相認める
アフリカ・南スーダン共和国が2013年12月15日に内戦状態に陥ったことを受け、PKO(国連平和維持活動)で同国に展開中の自衛隊部隊が、「緊急撤収計画」を決裁していたことが分かりました。日本共産党の笠井亮議員が16日の衆院外務委員会で自衛隊の内部文書をもとに追及し、中谷元・防衛相が事実関係を認めました。
政府が治安悪化で撤退を検討していたことは、当時から一部で報道されてきましたが、「撤収計画」具体化の事実が明らかになるのは初めて。自衛隊のPKO参加は停戦合意などが前提で、現地部隊が急速な内戦拡大に危機感を強めていた実態がはっきりしました。
笠井氏が示した「南スーダン派遣施設隊第5次要員に係る教訓要報」(陸上自衛隊研究本部、14年11月)によると、13年12月24日のテレビ会議で上級の中央即応集団司令官から「緊急撤収計画の具体化」が示唆されたことを受け、現地部隊長は同計画の見直しを隊本部幕僚に指示。14年1月8日に「決裁した」と明記されています。
これは事実かと追及した笠井氏に対し、中谷氏は「そういう記載がある。(事実として)あったと認識している」と答えました。
同文書には、自衛隊の駐留する首都ジュバの国連地区付近でも14年1月5日に銃撃戦が発生、全隊員に防弾チョッキ着用や、警備強化が命じられたことが記されています。
笠井氏は、「情勢が混沌とした状態になり、従来の施設活動への復帰の見通しが全く立たない」(同要報)と部隊から“悲鳴”があがっていたにもかかわらず、政治判断で握りつぶして派兵を継続したのではないかと指摘。中谷氏は「適時適切な指示がされた」と述べるにとどまりました。
南スーダンに特殊部隊を派兵/防衛省否定せず
アフリカの南スーダン共和国に展開中の自衛隊PKO(国連平和維持活動)部隊に、海外派兵を専門に担う陸上自衛隊・中央即応集団(CRF)傘下の、ほぼすべての部隊が派兵されていることが分かりました。16日の衆院外務委員会で、日本共産党の笠井亮議員の質問に対し、若宮健嗣防衛副大臣が明らかにしました。
若宮氏は、第1空挺団を除いて、南スーダンに司令部、司令部付隊、第1ヘリコプター団、中央特殊武器防護隊、国際活動教育隊、中央即応連隊、対特殊武器衛生隊の派兵実績があると答弁。南スーダンの自衛隊「施設隊」は、指揮系統だけでなく、部隊編成でもCRFが全面関与している実態が判明しました。
笠井氏は、“陸自唯一の特殊部隊”とされる「特殊作戦群」についても、他のCRF部隊と組み合わせて活動すると防衛省はこれまで説明してきており、「当然派兵されているはずだ」と指摘。若宮氏は、「そういう文脈になろうかと思う」と述べ、派兵を事実上認めました。
笠井氏は、戦争法によって南スーダンPKOに「駆け付け警護」などの危険任務が付与されれば、特殊作戦群などのCRF専門部隊が担うことになると指摘。戦争法の危険性がますます明白となりました。