住民無視の道路整備、立ち退き代替地示さず 郵便局撤去 東京都計画
現地調査する笠井議員ら
東京都が「防災」を名目に2020年度までに100%の整備をめざす「特定整備路線」計画に対し、「初めに道路ありき」の合意な手続きへの批判や「延焼対策に有効なのか」などの疑問の声が都民から上がっています。
特定整備路線は、震災による延焼を遮断するという名目で建設される都市計画道路で、都は28カ所(約26㌖)を選定しました。多くのところで、道路の整備で多数の住民が立ち退きの対象となる一方、都による住民説明会では「都側の説明が1時間ある一方、質疑応答は30分しかなく、多くの人が質問できずに打ち切られた」(品川区)など、住民合意を無視した計画の進め方に批判が噴出しています。
石原・猪瀬都政の下、都の防災対策は道路建設中心でした。震災対策事業計画(2011~15年度)のうち今年度予算で住宅の耐震化にはわずか7億7200万円、一方で大型道路建設には2034億円を投じています。
日本共産党都議団は、白石たみお都議が昨年12月の都議会で特定整備路線について一般質問。都が行ったシミュレーションでは計画により地域が安全になるかの検証がされないことを批判し、「まず住宅の耐震化支援こそ大切だ」と追及しました。
この間、日本共産党の笠井亮衆院議員は部内の特定整備路線予定地を現地視察しました。18日には品川区を通る「補助28号線」「補助29号線」「放射2号線」の3路線を自石都議、区議団と調査。20日には、北区内を通る「補助81号線」「同73号線」「同86号線」の計画地4カ所を党区議団の案内で視察しました。
このうち、幅6メートルの現道を全長640メートルにわたり20メートルに拡幅する補助86号線を計画している志茂1丁目地域では、住民や畳屋、美容院など商店街の業者と懇談。「都に聞いても代替地は示されず『都営住宅に入ればいい』と説明された」「地域の高齢者が利用する郵便局が撤去される」「今の道でも緊急車両は通れる」などの声が上がりました。また補助86号線の予定地にある自然観察公園やスポーツの森公園なども視察し、計画に自然破壊の危険性があることを確認しました。
補助81号線(西ケ原地域)の視察では、当初、道路が員通する区間となっていた無量寺を訪問。住民の強い反対で無量寺の員通は今回の計画から除外されましたが、住職の金子智鏡氏は「計画自体が理不尽な内容であり、地域の歴史を壊すものです」と批判しました。
視察を終えた笠井氏は「事業に道理がない上に、地域のコミュニティーを壊す計画だと実感した。国がこうした計画を認可し補助金を支出するのか、ただしていきたい」と話しました。
各地で計画に反対する住民運動が広がっています。補助86号線が計画される北区志茂1丁目地域の住民は、区内外に計画の見直しを求める署名を呼びかけ、約1600人分が寄せられました。
3路線が計画されている品川区では、区内の住民4団体が共同して「道路問題しながわ連絡会」を結成しています。
一方で、東京都は特定整備路線建設のピッチを速めています。都は5日、国土交通省関東地方整備局に補助29号線(品川区)、補助26号線(豊島区)の合計3カ所の事業認可を申請しました。申請を受理した関東地方整備局は、約1カ月で認可の可否を判断するとしています。
19日に小池晃、田村智子両参院議員、自石都議とともに国に「事業認可するな」と要請した「道路問題しながわ連絡会」では、都と区、国に対して、さらに運動を広げていこうと確認しています。
(2014年2月26日「しんぶん赤旗」日刊紙より)