新規制基準の適合審査始まる ポンプ車台数 規制委、「共用」でごまかし
(「しんぶん赤旗」2013年7月16日付より)
再稼働の前提となる原発の新規制基準の適合審査が16日から原子力規制委員会で始まります。日本共産党の笠井亮衆院議員の調べで、もともと不十分な新基準の内容さえ、電力会社のいいなりで値切られた対策が適合審査で了承される実態が浮かび上がりました。
新基準には、東京電力福島第1原発事故で起きた炉心溶融(メルトダウン)のような重大事故対策の設備として、可搬型(移動可能)の電源車やポンプなどの注水設備を求めています。設置台数も規定しており、原子炉1基当たり2台以上を持つこと、加えて故障時のバックアップを発電所内で確保することになっています。(規則の解釈43条)
ところが、今月3日、稼働中の関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転継続を容認した規制委の新基準への適合確認では、可搬型注水設備に当たる大容量ポンプ車は、3・4号機共用で2台、バックアップ用に1台の計3台で了承されました。先の規則を適用すれば、3号機で2台、4号機で2台の計4台は最低でも必要なはずです。
関電は8日に規制委に提出した大飯原発3、4号機と高浜原発3、4号機(福井県高浜町)の再稼働に向けた申請書でも、同ポンプ車を3台配備としています。「原子炉等規制法に定められている通り、原子炉の運転許可取り消しになるのではないか」との笠井事務所の問い合わせに、規制委の事務局である原子力規制庁は「常設のものは『共用するものではないこと』と共用が認められていないが、可搬型のものには、その記述がない」として、号機間で使い回しができると説明。電力会社に寄り添った姿勢です。
しかし、規制委が4月に了承した、一般公募意見に対する回答では、一つの敷地に複数機が立地する原発の場合は、「号機間で共用する設備に依存せずに対策が実行できることを要求」しています。
もともと規制委が可搬型設備を1基2台以上備えることを求めたのは、可搬型の設備が一般の産業品で、原発で求める規格より信頼性が低いことや、福島第1原発事故の際に、現場に向かった消防車が水素爆発の影響で使えなくなったからです。しかも、福島第1原発事故では、3基がメルトダウンを起こしており、号機間で使い回すこと自体が、同原発事故の事実と教訓を忘れたものです。
電力会社いいなりに、基準にある対策まで値切ってもよしとされるなら、新基準は何のためかが、改めて問われます。