日本共産党の志位和夫委員長は19日、国会内で菅義偉(すがよしひで)官房長官と会談し、党が先に発表したアピール「賃上げと安定した雇用の拡大で、暮らしと経済を立て直そう」を手渡し、「政府として本腰を入れて賃上げ政策をとるべきだ」と提起しました。これは、アピールに基づく政界・経済界・労働界への働きかけの第1弾で、穀田恵二国対委員長、笠井亮衆院議員が同席しました。
志位氏は、賃上げと安定した雇用は労働者の当然の願いであるとともに、デフレ不況打開のために待ったなしの課題になっていると強調しました。
そのうえで、デフレ不況打開のアプローチについては政府と日本共産党で立場の根本的違いがあるが、この間の国会論戦を通じて、▽賃上げの必要性▽その条件は内部留保のことを考えれば存在する―という2点では認識が一致していると指摘し、「政府として『賃上げターゲット(目標)』を持ち、本腰を入れて賃上げ促進策に取り組むべきです」と述べました。
このなかで志位氏は、具体的に二つの取り組みを提起しました。
一つは、政府として経済界にたいし賃上げの働きかけを本腰を入れておこなうことです。経済界が賃上げはおろか、定期昇給の拒否など「デフレ促進策」を公然と唱えている点にふれ、「政府が正面から企業の社会的責任として賃上げの要請をするべきです」と強調しました。
二つ目は、政府としてワンパッケージ(一括)で「賃上げ促進政策」を実行することです。▽非正規社員の正社員化▽最低賃金の抜本的引き上げ▽中小企業と大企業との公正な取引のルール▽公務員給与削減や生活保護の切り下げなど「賃下げ促進策」をやめる―ことを主張しました。
菅官房長官は経済界への賃上げの働きかけについて、先に安倍晋三首相が経済団体に要請したことにふれ、「引き続き働きかけていく」との考えを示しました。最低賃金については「もっと上げたかった」とのべつつ、中小企業に及ぼす影響を懸念しました。
これに対し志位氏は、経済界にたいする政府の要請は「報酬の引き上げ」にとどまっていることに言及し、「『報酬』というと賞与や一時金です。これまでも財界は、一方でベースアップを拒否しながら、利益に応じて賞与・一時金の増減で対応し、結局、賃金は下がり続けてきました。賃金の引き上げを正面から要請することが必要です。賃金が下がり続けている国は世界でも日本だけであり、政治が正面から問題にし、要請するのは当たり前です」と強調しました。
最低賃金については、米国が5年で8800億円、フランスが3年で2・2兆円を投じて、中小企業を支援しながら最低賃金を引き上げているのに対し、日本は年間50億円にすぎない点にふれて、「政府は真剣に取り組むべきです」と主張しました。
菅氏は、志位氏の提起に、「ご趣旨は承りました。総理に伝えます」と応じました。
(「しんぶん赤旗」2013年2月20日)