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【10.08.03】「財政再建」へ「聖域」にメスを

笠井議員の質問 衆院予算委

 
 「国の財政が大変だというが、取るべきところからきちんととっているのか」―3日の衆院予算委員会で菅直人首相に迫った日本共産党の笠井亮衆院議員。消費税増税をやめて「聖域」にメスを入れよと求めた質問に他党議員も聞き入りました。

大企業トップに巨額報酬、大金持ち減税やめよ、首相「再配分機能を強める」

 「特権的な不公平税制の一掃にこそ『聖域』をもうけず、ただちにとりくむべきだ」。「税制改革」をいうなら大資産家優遇税制をただせと求める笠井氏の追及に、菅直人首相は、大企業・大資産家優遇税制が所得格差を広げてきたことを認めました。
 歴代自民党政治のもと、大資産家は数々の優遇税制の恩恵を受けてきました。
 所得税の最高税率は、1974年の75%から現在の40%まで段階的に引き下げられました。株式配当にかかる税率は、本来20%だったものが現在10%に軽減されています。
 笠井氏は、1億円以上の報酬をもらっている大企業の役員が全体で約170社、約290人にのぼることを紹介。このうち223人でみると減税額(98年時の税率と比較)が52億8000万円(1人あたり平均2368万円)に達することを指摘しました。
 笠井 大億万長者への減税の大盤振る舞いを放置せず、所得税の最高税率を元に戻すべきだ。
 菅首相 この間の高額所得者の負担軽減が所得再配分機能を弱めている。そういう変化や今の指摘を踏まえ、所得税のあり方についても、政府税調や民主党でも議論し、年末の税制「改正」にあたっていきたい。

 笠井氏は質問の中で「企業トップと従業員の給料格差」 (資料①/PDFbt_20101115152145.pdfを示しました。日産自動車で約142倍など、驚くべき格差があることが浮き彫りになりました。
 笠井 大企業のトップは減税し、従業員やサラリーマン、庶民にはこの間、さんざん増税してきた。こういう不公平をたださなければならない。
 菅首相 この10年あまり所得税の最高税率が引き下げられ、その中で格差が広がってきた。所得税のあり方について、もう少し再配分機能を強めることも念頭にいれ、議論を政府税調など各方面にお願いする。

 笠井氏は、“濡(ぬ)れ手で粟(あわ)”の大金持ち減税の対極にあるのが消費税増税だとして、低所得者ほど負担の重くなる消費税増税を批判しました。
 また、アメリカのオバマ政権が高額所得者と多国籍企業にむこう10年間で100兆円もの増税を求め、それを国民生活などにまわす税制改正を進めようとしていることを紹介。「大企業・大金持ちへの不公平税制の一掃は『負担能力に応じた税負担』という原則にたった税制改革の出発点になる」と強調しました。

ゴルフ場拡張に134億円、米軍「思いやり」削れ、首相「納税者の理解が重要」
 笠井氏は、財政危機だというのなら、ムダ遣い一掃のため「年間5兆円規模の軍事費も例外であってはならない」と強調。始まった米軍「思いやり」予算(在日米軍駐留経費の日本側負担)特別協定の期限切れ(来年3月末)に伴う日米交渉についてただしました。
 笠井 米側は「思いやり」予算の増額を要求している。とんでもないと断り、抜本的に削り込む姿勢で臨んでいるのか。
 北沢俊美防衛相 娯楽性の伴うものについては是正すべきだという議論を踏まえて交渉していく。透明性を担保しながら包括的な見直しをする。

 笠井氏は、駐留軍関係費で沖縄県中部の米軍ゴルフ場(47ヘクタール)の「代替施設」として米軍嘉手納弾薬庫地区に新設された「タイヨーゴルフクラブ」の実態を示しました。日本国民の税金134億円で新設され、クラブハウスやレストラン、カジノバーまで備えています。 (資料②/PDFbt_20101115152220.pdf
 笠井 米軍用のゴルフ場は全国に10カ所もある。こんな米軍への至れり尽くせりが納税者の理解を得られるのか。
 岡田克也外相 日本人の税金でまかなうべきなのかという声があがるのは当然だが、今までの(米軍への)サービス水準を落とさないということであれば、こうならざるを得ない。

 笠井氏は「国民は納得しない」と批判。さらに「思いやり」予算によって映画館から体育館、プールなど娯楽施設までつくられ、米軍の司令官住宅は寝室四つと浴室三つもある豪華仕様だとのべ、「なぜ見直さないのか」と迫りました。
 岡田 「思いやり」予算という言葉を我々は使っていない。

「ホストネーションサポート」(米軍受け入れ国支援)だ。
 笠井 野党のときは散々、「思いやり」予算はけしからんと追及してきたではないか。今度(与党になれば)はホストネーションサポートか。

 笠井氏がこう批判すると、岡田外相の詭弁(きべん)に対して場内から失笑が起きました。
 笠井氏は、「思いやり」予算が1978年当初は62億円だったのが年々増加し、09年までに総額5兆6000億円にものぼり、今年度は米軍再編経費などを加えると日本側負担は合計3370億円の過去最高となったことを示しました。
 笠井 これ以上「思いやり」負担を続ける理由も道理もない。今こそ廃止すべきだ。
 菅直人首相 納税者の理解が得られることが重要だ。(「思いやり」予算を)全部やめてしまえというのは、少し話が違う。日米の同盟関係を基本として判断することだ。

 笠井議員は、「『思いやり』予算は、日米安保条約や日米地位協定にも法的根拠がない負担だ。『日米安保条約があるから』という理屈は通用しない」と批判しました。

軍需企業職員に日当10万円超、癒着をただせ、首相「透明性はかっていかなければ」

 軍事費をめぐってただすべき問題として笠井氏が取り上げたのは、軍需企業との癒着の構図。ミサイルや戦闘機などの研究・開発・試験のために軍需企業から「技術支援」の名目で職員を受け入れ、「役務の対価」として平均10万円超の高額な「日当」を支払っている問題です。
 過去5年間に平均60社から職員を受け入れており、今年度から調達が始まった「10(ひとまる)式戦車」を生産する三菱重工業など発注関係のある企業がずらりと並んでいます。

 笠井亮 企業側に支払った「日当」の05年度から今年6月末までの総額はいくらか?

 北沢俊美防衛相 約267億円。

 笠井 何人の職員に、1人1日あたり平均いくら支払ったのか。

 北沢 正確な数字がまだ出ていない。

 笠井 払った金額をなぜ答えられないのか。職員1人あたりの「日当」が明らかになると、国民の常識から理解できないくらい高すぎるからではないか。

 笠井氏は、07年度に技術支援契約(かつての「労務借り上げ」契約)金額の多い上位20社だけでも、3万3409人に1人平均10万5000円、1位のダイセル化学工業の場合は16万7000円、2位の日本電気は15万円など、破格の「日当」を支払っていることを告発。委員会内の各議員は表に見入りました。
 笠井氏は、「企業側も自らの職員の派遣を期待している。開発した兵器が量産段階に移行する際、その研究開発を担当した企業が選定されるからだ。ここに官業のもたれあい、癒着の構造がある」と指摘しました。 (資料③/PDFbt_20101115152254.pdf

 笠井氏はまた、高額の「日当」の算出方法は企業側のデータを基礎とした“言い値”になっていることを指摘。旧防衛庁の報告書で企業側との契約はすべて「一般競争入札等に移行する」となっていたにもかかわらず、昨年4月から今年6月末までに契約上位20社と競争入札を行った件数はわずか1割で、その他は競争入札なしの随意契約であることを強調。「何も見直されていない。『事業仕分け』というなら、こういう問題にこそ抜本的メスを入れるべきだ」と主張しました。
 菅直人首相は、「(防衛省分野は)他の分野と違う特色がある」としながらも、「基本原則としてはどの分野でも透明性、効率化をはかっていかなければならない」と答弁。防衛省に対し、必要な対応をさせると述べました。

ハローワーク職員、「非正規」6割も、厚労相「処遇改善に努める」
 厚生労働省が3日に公表した労働経済白書は、低収入層の割合が高まった大きな要因に、非正規の増加があると分析しています。
 笠井氏は、同白書が「今後は正規雇用化をすすめ、雇用の安定拡大と格差是正をともに追求することが大切だ」と述べていることを紹介。その上で、官製ワーキングプアと呼ばれる国や地方自治体で働いている非常勤職員の劣悪な雇用実態を取り上げ、「非常勤公務員の雇用・労働条件の安定、均等待遇の実現」を強く求めました。
 「月給は民間時代の6割程度。ボーナスも昇給もない。妻が家計を助けている。『来年度も仕事があるかという不安が尽きない』」―。笠井氏は、全国紙に掲載されたハローワークで就職相談を担当する非常勤職員の50代男性の実態を紹介しました。

 笠井 非正規で働くハローワークの職員が全体(3万人)の6割もいる。これでは職業安定所どころか「職業不安定所」だ。こういう事態を放置していいのか。
 長妻昭厚労相 総定員法による定員削減・管理の中で仕事をしていただいている。処遇改善も1日あたりの賃金を上げていくということで2010年度にも努力している。できるかぎりその職場の改善に努めたい。

 笠井氏は、「(国家公務員の定員を管理する)総定員法があるからといって、こういう状況を放置していいということにならない」と指摘。「先に紹介した男性は『一部の高級官僚と大変な思いをしている現場が同じように批判されるのはつらい』と記事の中で言っている。この思いを受け止め、(実際に処遇を改善するよう)しっかりとやるべきだ」と強く求めました。

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