拘束力ある公的協定を
基本法案 笠井議員、抜本修正迫る
地球温暖化対策基本法案の審議が20日から衆院で始まり、日本共産党から笠井亮衆院議員が質問に立ちました。同法案は、温室効果ガスの2020年の中期削減目標(1990年比25%減)に、すべての主要国による国際的枠組みづくりと意欲的な目標の合意という条件をつけ、条件が満たされない限り目標設定がされない仕組みとなっています。笠井氏は、こうした問題点を指摘し、法案の抜本的修正を求めました。
笠井氏は25%目標の前提条件について、「これは、旧政権が目標設定を避ける口実にした理屈とまったく同じで、温暖化対策に激しく抵抗している一部の業界や大企業の主張そのものだ」と批判。「共通だが差異ある責任の原則にのっとり、他国がどうあれ、日本が先進国としての責任を果たすべき」とのべ、前提条件を削除することを求めました。
条件つきで掲げた削減目標自体についても、削減を裏づける実効ある措置が盛り込まれていないと指摘。排出量の8、9割を占める産業界の排出を規制するために「欧州各国が取り決めているような、政府が産業界と拘束力ある公的協定を結ぶことが不可欠」とのべ、締結を求めました。太陽光発電など再生可能エネルギーの導入目標(20年)は低いと指摘し、法案の10%から20%に引き上げることを求めました。
削減目標にふさわしい実効ある対策がないために原発推進に頼るものになっており、政府の「エネルギー基本計画」で旧政権の計画を上回る原発の新増設と稼働率引き上げを掲げていると批判。技術的に未確立で安全性が確立されていない原発に頼るべきでないとのべ、原発推進条項の削除を求めました。
鳩山首相は「日本だけが高い目標を掲げても気候変動をとめることはできない。前提条件は必要」「原発は低炭素社会に不可欠だと考えている」と答えました。産業界との公的協定については、国内排出量取引制度を設けるとのべるにとどまりました。
(しんぶん赤旗/2010年4月21日より)
本会議質問(全文)
地球温暖化を抑止することは緊急かつ人類共通の待ったなしの課題です。昨年、コペンハーゲンで開かれた国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)は、法的拘束力のある国際協定締結に期待がかけられました。しかし、2050年までに温室効果ガスを50%削減することも、先進国が掲げる中長期目標も今後の課題として残されています。国際合意づくりは一刻の猶予も許されません。わが国は先進国であり、京都議定書の議長国だからこそ、責任はいっそう重大です。ところが本法案は、それにふさわしいものとは到底いえません。
問題な中期目標
一番の問題は中期削減目標です。総理は、昨年9月の国連気候変動首脳会合で2020年までに1990年比で25%削減する目標を掲げたものの、「すべての主要国による国際枠組みの構築及び意欲的な目標についての合意実現」という前提条件をつけました。法案ではこの条件が満たされたと判断しない限り25%削減の目標を設定しないとしています。
この前提条件は、旧自公政権が、中期目標設定を避ける口実にした理屈と全く同じで、温暖化対策に抵抗している業界や大企業の主張そのものです。これでは米中など主要排出国が参加しない限り自らの目標を掲げないとして国際合意づくりに逆行するではありませんか。
気候変動枠組み条約は、「共通だが差異ある責任」の原則を定めています。国際社会でリード役を果たすというなら、EU(欧州連合)のように率先して野心的な中長期の法的拘束力のある削減目標を掲げ、他国はどうあれ自らの責任として実行するとともに、途上国には同じ道をたどらなくても経済成長は可能であることを示し、それにふさわしい技術・資金援助をおこなうという、先進国としての「二重の責任」を果たすべきです。中期目標設定の前提条件は削除すべきです。
主要国の参加をいうのであれば、最大の問題はアメリカの姿勢です。先進国のなかで最大の排出量を占めながら、拘束力ある削減義務を拒否し続け、低い削減目標にとどまってきたアメリカにこそ、より思い切った削減目標を掲げ、責任を果たすよう求めるべきではありませんか。
実効措置がない
第二に、条件付きで掲げた削減目標自体についても、それを裏付けるにふさわしい実効ある措置が盛り込まれていないことです。
温室効果ガスの削減目標を達成するためには、排出量の8~9割を占める産業界の排出を規制することが決定的です。旧政権は産業界の排出削減は日本経団連の自主行動計画に任せ、日本が増加させてきた最大の要因となってきました。
大企業の排出を規制するには、イギリスやドイツなど欧州各国が取り決めているような、政府が産業界と拘束力のある公的協定を結ぶことが不可欠です。ところが法案には、これに関する規定は全くありません。産業界を規制するルールがあってこそ、国内排出量取引制度や再生可能エネルギーの目標も実現を確実なものにできます。政府と産業界との公的な削減協定を締結すべきではありませんか。
法案では、再生可能エネルギーの導入目標を10%としていますが、あまりに低すぎます。少なくとも20%に引き上げるべきではありませんか。再生可能エネルギーは電力会社に全量買い取りを義務づけ、その費用には当面、電源開発促進税の税収を充てることで国民生活への影響を与えないようにすべきではありませんか。
原発推進に頼る
第三に、削減目標にふさわしい実効ある総合的な対策がないから結局、原発推進に頼るものになっていることを厳しく指摘したい。
政府は、「エネルギー基本計画」で地球温暖化への対応を口実に、原発を「低炭素エネルギーの中核」と位置づけ、2030年度までに少なくとも14基を新増設し、稼働率も現在60%台から90%に引き上げようとしています。これは旧政権の「約9基の新設、利用率は80%程度」よりも上回るものであり、電力業界の現計画すべてを認めるものです。
原発は技術的に未確立で安全性が確保されておらず、放射能汚染という深刻な環境破壊をもたらすものです。放射性廃棄物の処理・処分方法も未確立であり、日本が有数の地震国であることに照らしても原発大増設の計画は無謀かつ危険極まりないものです。稼働率の引き上げは原発の定期検査間隔を大幅に延長し、老朽化した原発を酷使し、事故につながる危険なものではありませんか。原発に依存することは、国内排出量取引や再生可能エネルギー導入など本来の対策全体を弱めることになるではありませんか。原子力推進の条文は削除すべきです。
1997年に京都議定書が採択されたのに、日本のとりくみは大きく立ち遅れてきました。財界は国際競争力の維持を口実に本格的なとりくみに反対し続けてきました。他方EUは、持続可能な発展戦略のもとに温暖化対策を経済、社会の運営の柱にすえ、新しい産業や雇用を生み出してきました。こうした方向に大きくかじを切り替えることこそ必要ではありませんか。
今こそ国連で約束した削減目標に他国がどうであれ前提なしに責任を負う態度を確立するとともに、その裏づけとなる総合的対策を確立し、文字通り世界をリードする自覚をもってとりくむよう、法案の抜本的修正を求めて質問を終わります。