東京外環道=国交省OB・ゼネコンの自作自演、技術開発も選定も 国交省OBとゼネコンが推進
衆院予算委員で笠井議員追及
「経済危機対策」として補正予算案に盛り込まれた東京外かく環状道路(外環道)の整備事業に大手ゼネコン役員が多数参加する財団法人が深くかかわっている構図が、八日の衆院予算委員会での日本共産党の笠井亮議員の質問によって明らかになりました。大型公共事業復活の背景に国土交通省と大手ゼネコンの癒着があることを告発した笠井氏は、「ゼネコンによるゼネコンのための事業ではないか」と追及しました。
政府は四月十日に発表した「経済危機対策」で、「国幹会議(国土開発幹線自動車道建設会議)の議を経て外環道等を整備計画に位置付け」と明記。同二十七日の国幹会議は、東京外環道など四区間合計七十一キロの整備計画への格上げを決定しました。
概算事業費総額一兆五千百九十億円のうち、東京外環道は一兆二千八百二十億円の計画です。
笠井氏が取り上げたのは、「先端建設技術センター」の実態。同センターは国交省の専門委員会として外環道のトンネルの実現性を検討してきた「大深度トンネル技術検討委員会の資料作成などを受託しています。
笠井氏が示した「技術センター」の役員・評議員名簿には、国交省のOBや大手ゼネコン、新日鉄、川崎重工などの現職役員などがずらりと名を連ねていました。
笠井氏は、「外環道の施工業者選定の判断基準となる技術開発を、選定する側の国交省の天下りOBと、選定される側のゼネコンが一体で進めている。こんなことが許されるか」と迫りました。
麻生太郎首相は、「その点だけを見ると今の意見もわからんではない」と認めざるをえませんでした。しかし麻生氏は「(外環道は)税金を投入してもやるに値する事業だ」とあくまで推進する姿勢に固執しました。
笠井氏は、「外環道のように、構想以来四十年以上なくても困っていないものより、国民のために今、ないと大変なものこそ優先すべきだ」と強調。廃止された生活保護の母子加算の復活などを求めました。
※外環道新規整備計画
東京・練馬―世田谷間16キロを結ぶ地下40メートルの深さに直径16メートルのトンネルをつくる計画。概算事業費総額は1兆2820億円。
<論戦ハイライト>
東京外環道路 巨税飲む大トンネル
天下り官僚とゼネコン一体 衆院予算委 笠井氏の追及
巨額な税金を投入する不要不急の大型トンネル工事(東京外かく環状道路)は大手ゼネコンによるゼネコンのための計画だった―。日本共産党の笠井亮議員は八日の衆院予算委員会で、二〇〇九年度補正予算案に盛り込まれた高速道路整備計画のゆがんだ構図を浮き彫りにしました。具体的な実態を示した追及に、与党議員からも「鋭かった」との声が上がりました。
◆首相「(ゼネコンのためとの指摘)わからんでもない」
政府は外環道など四路線の高速道路の整備計画の着工費用を補正予算案に盛り込みました。
笠井 高速道路の整備計画路線は二〇〇六年、当時の小泉総理が「(従来の計画以外は)白紙」としてきたのではないか。
金子一義国交相 九千三百四十二キロ以外は「白紙」とした。今回は、ほぼ十年ぶりに追加整備だ。
笠井氏は「『経済危機対策』のどさくさで、大型公共事業を新たに増やす大転換だ」と指摘。国交相の諮問機関が、総事業費一兆五千百九十億円の四路線着工をわずか九十分の審議で決定したことについても、「一分間で百六十八億円もの(支出を決める)スピード審議だ」として、十分な審議もせずに政府方針を覆す無責任さを厳しく批判しました。
◆税金投入の新方式
笠井氏は、四路線の中で最大事業となる外環道(一兆二千八百二十億円)の計画に、膨大な税金投入の仕組みが新たに盛り込まれていることも告発しました。
練馬―世田谷間十六キロを結ぶ外環道は、地下四十メートルもの深さに直径十六メートルのトンネルをつくる計画。五階建てマンション並みのトンネルが上下二本も通る、文字通り「日本の土木工事史上、最大規模」となります。
外環道の建設費は、道路会社が料金収入で全額負担する従来方式を変え、道路会社と国・都が相互に費用負担する「合併施工方式」を取り入れるとしています。
笠井 国民の税金を投入する方向で検討しているのか。
国交相 有料道路(道路会社負担)は一割から三割程度とし、残りは国の直轄事業(税金)で、国が四分の三、東京都が四分の一(の負担)でやる。
笠井 事業費が今後、絶対に増えないと断言できるか。
国交相 用地買収など(費用の)未確定要素が残っている。
金子国交相は、投入される税金がさらに膨らむ可能性を否定できませんでした。笠井氏は、首都高(中央環状新宿線、十一キロ)も事業費が最終的に二倍以上に膨れ上がったことを指摘。「外環道も二倍になれば二兆五千億円以上。とてつもない大型公共事業だ」と批判しました。
なぜ巨額の税金投入までして外環道を推進するのか。笠井氏は、その背景にある国交省とゼネコンの不透明な癒着を明らかにしました。
外環道の技術検討を行う「大深度トンネル技術検討委員会」―。国土交通省関東地方整備局のもとに置かれ、外環道を建設する業者を決める上で重要な委員会です。
笠井氏は、本来「公正中立」で「特定の利害を代表する」者がいないはずのトンネル委員会と、国交省の財団法人「先端建設技術センター」との不自然なつながりを突きました。
技術センターは、トンネル委員会の資料を作成。その上、技術センターの理事がトンネル委員会に参加していることを指摘。「委員会は、技術センターのおぜん立てのもと、外環道の技術的な検討を行っている」と迫りました。
しかも技術センターの役員・評議員には、国交省OBや鹿島建設、大林組、竹中工務店、清水建設、大成建設など大手ゼネコンの現職役員がずらり名を連ねています。
笠井 業者選定の判断基準となる技術開発を、選定する側の国交省天下りOBと、選定される側のゼネコンが一体に進めている。こんなことが許されるのか。
国交相 トンネル委員会のメンバーは、専門家で構成されている。透明性、公平性が保たれている。
根拠もなく「公平性を保つ」と繰り返す金子国交相。笠井氏は、トンネル委員会が〇七年三月にまとめた資料を突きつけました。そこでは、外環道について、西松建設を含む十八社のゼネコンが、工法や概略工期、概算工費などを競って提案しています。
笠井 これではゼネコンによるゼネコンのための事業だ。
首相 その点だけを見ると今の意見もわからんでもない。しかし、(外環道は)税金を投入してもやるに値する事業だ。
◆与党席からも拍手
あくまでも事業推進に固執する麻生首相。笠井氏が「国民の目の届かない深いトンネルで国交省とゼネコンがつながって不透明なやり方が行われている。極めて重大な問題だ」「(外環道事業費の)一兆二千八百億円あれば、廃止された生活保護の母子加算を六十四年分も復活できる」と述べると、野党だけでなく与党議員からも拍手が起こりました。
「政策の優先順位が間違っている」。笠井氏はこう述べ、国民の命と暮らしを守る緊急政策を最優先するよう政策の転換を求めました。
〔記事はしんぶん赤旗5/9付、写真はNHKの中継より〕