どうみる国民投票法案 笠井亮衆議院議員にきく

(「しんぶん赤旗」2006年1月7日、8日付より)

 20日に召集予定の通常国会では、改憲の手続き法である国民投票法案の行方が大きな焦点になります。日本共産党の笠井亮衆院議員(憲法調査特別委員)に、同法案をめぐる問題について聞きました。

九条改憲と表裏一体

自公民の合意

 昨年12月20日に自民党の中山太郎衆院憲法調査特別委員長を中心に、民主党、公明党の担当者が集まり、通常国会で国民投票法案の成立をめざすことで合意しました。
 与党側の提起に対し、民主党憲法調査会の枝野幸男会長は、「技術的な問題がクリアされれば速やかに国会で成立させることが望ましい」と応じたと言われています。自公民三党での議論はそこまできています。
 では一路成立で行くのかというと、各党それぞれに矛盾を抱えています。しかも現在参院には、法案を審議するような委員会はありません。なにより、国民が改憲のための手続き法を望んでいるわけではないという根本問題があり、改憲勢力の思惑通りにいかせてはならないと思います。

『素の顔』と実際

 私が昨秋の特別国会で憲法調査特別委員会に参加して感じたのは、国民投票法案はある意味で「表の顔」だということです。委員会では国民投票法案が議題となっていますが、実際には改憲案の中身のすり合わせと表裏一体のものです。
 この調査特別委員会の会議や欧州調査(05年11月7日〜19日)と並行して、10月28日には自民党が「新憲法草案」をまとめました。九条二項を削除して「自衛軍の保持」を明記するなど「海外で戦争する国」づくりを明確にしました。その3日後には、民主党が「憲法提言」を出し、集団的自衛権を含む「自衛権」を書き込むという九条改定の方向を示しました。
 公明党も太田昭宏・党憲法調査会座長が「九条改正は避けられない」と発言しました。現実の改定の動きを背景にして、そのための国民投票法案をどうするのだという話です。

日米同盟の強化

 もう一つ重要なのは、憲法改定の動きと日米同盟強化の動きが同時に進行していることです。ちょうど自民党の「新憲法草案」が発表された翌日に日米安全保障協議委員会(2プラス2)の共同文書で在日米軍再編、基地強化・永久化が打ち出されました。
 日米同盟を地球的規模で拡大強化し、自衛隊が米軍と一体化し海外で戦争する国にする体制づくりが進行し、九条といよいよ両立しえなくなっています。その流れの中で九条改憲の手続き法づくりをやろうとしています。
 日本共産党は「九条改憲のための国民投票法案はいらない」として、衆院憲法調査特別委員会の設置に反対しました。その後の事態がこの指摘の正しさを裏付けていると思います。
 自民党や民主党が、「改憲の中身とは別にして投票法の仕組みだけは憲法96条に基づいてつくっておこう」といっても、九条改憲と一体のものであることは現実が示しています。

国民は求めず

 国民投票法はなぜつくられてこなかったのかというと、国民は憲法改正を望んでおらず、国民投票法を必要としてこなかったということです。
 改憲派は「憲法九六条に改正規定があるのに手続法がないのは立法不作為だ」「国会の怠慢だ」と主張します。しかし、立法の不作為というのは、憲法に基づく法律が整備されていないため国民の権利が侵害されている時に問題にされることです。国民投票法がないために主権者である国民の権利が侵害されているわけではありません。
 1953年、自治庁(当時)が案をつくったものの「九条改憲につながるから」という国民の反発があり提出を断念したという経緯がありました。以来50年以上国民の側から国民投票法案を求める声はあがりませんでした。国民投票法の制定は改憲の条件を整えていこうという動きにほかなりません。
 国民の多くは今、憲法を積極的に変えたいとは思っていませんから立法不作為論は当たらないのです。

“ハードル低く”に執念

 今回、憲法調査特別委員としてヨーロッパに調査(2005年11月)に行き感じていることは、各国がそれぞれ歴史の苦い教訓を忘れておらず、国民投票制度を慎重に扱っていることです。
 オーストリアでは第二次大戦の前にナチスによるドイツとの併合問題で国民投票が行われ、ヒトラーのデマ宣伝と強引な手法の結果、99%の賛成で併合が決まりました。
 フランスの場合は、戦後ドゴール大統領が人気投票的な国民投票を乱発し大統領権限の強化に利用しました。
 スペインでは内戦があり国が二分された経験から、国民投票実施にあたって「国民合意があるかどうか」を非常に大切にしていると語っていました。
 また、各国は「国の基本的価値」を非常に大事にしていて、人権など基本的な価値を変えてしまうような憲法改正はそもそも想定していないのです。
 日本国憲法でいえば、最大の基本的価値である九条や前文の平和主義をひっくり返す「改正」はありえないと強く感じました。

改憲に損か得か

 九条を守ろうという国民の世論は根強いものがあります。「毎日」の世論調査(05年10月5日付)でも、62%の人が九条改定に反対です。改憲派は、この世論をどうやってひっくり返し改憲賛成にもっていくか、投票方法でもいかに可決されやすい方向にするか、国民の中の最小限の賛成で、国民投票の過半数を得る仕組みをつくろうとしています。
 そのために、一つは国民投票のハードルを低くすることに執念を持っています。憲法96条は、改定には国民投票で「過半数の賛成を必要とする」と定めていますが、過半数をどうするかは、「有権者の過半数」や「投票総数の過半数」などさまざまな意見があります。自民党はもっともハードルの低い「有効投票の過半数」と主張しています。
 投票権者の年齢について、自民党は20歳以上を主張しています。18歳以上がいいのか20歳以上がいいのか、九条改憲にとってどちらが得かで考えています。

言論規制の危険

 国民投票法案のもう一つの大きな問題点は、マスメディアへの規制と国民の運動への規制です。
 自民党は「国民投票運動は自由」といいますが、公職選挙法程度の規制は必要だとしています。戸別訪問は禁止ですし、「地位利用」にあたるとして公務員や教育者は運動できません。マスコミの「虚偽報道」は規制すると主張してきました。
 しかし、何をもって「地位利用」とするのか非常にあいまいです。例えば、憲法学者が授業で憲法について「この憲法は大切だ。守ろう」と話したらそれは法に触れてしまうことになります。
 誰が何をもって「虚偽報道」と判断するのか、非常に恣意的に運用される危険があります。
 ヨーロッパで調査すると、どこの国で質問しても「メディアや運動規制はありえない」との答えが返ってきました。戸別訪問も自由です。
 ただし、テレビやラジオでは公正中立を貫くように、フランスなどでは賛成派と反対派の発言時間が対等になるように独立機関がチェックしています。
 日本では、ビラ配布弾圧事件などが現実に起きており、自民党の中には「規制には罰則が必要」と発言する議員もいます。国民からの批判もありメディア規制をやめるとの動きも伝えられますが、国民の言論・表現の自由が規制される危険を見逃すことはできません。

狙いを知らせて

 今後のたたかいは、九条改悪の条件づくりという国民投票法案の狙いを国民に知らせていくことだと思います。改憲勢力の側も国民過半数の世論結集を正面に据えてやってきています。
 九条守れの強固な世論と運動、過半数の国民の意思をどれだけ早く作り上げるかです。「九条の会」が4,000を突破し全国に広がっているのは素晴らしいことです。
 私たち日本共産党の国会議員団も国民の広範なたたかいと心を一つにして、憲法改悪反対の国民多数派結集に向け頑張る決意です。