(しんぶん赤旗2006年8月9日・11日・12日より)

憲法欧州調査に参加して 笠井衆院議員に聞く<上>
イタリア/国民投票で改憲否決

 7月16日から行われた衆院憲法調査特別委員会の海外派遣(欧州各国憲法及び国民投票制度調査団)に参加した日本共産党の笠井亮議員に話を聞きました。

独裁時代の反省


ポーランド選管での懇談。右から
4人目が笠井議員

  今回の視察で私はポーランドとイタリアを訪れました。訪問先では、国民は憲法にどう向き合っているのかという点に問題意識を持ちながら話を聞いてきました。大変参考になる話も聞けたし、日本共産党や「9条の会」にまつわる面白いエピソードもありました。イタリアは六月末、戦後の憲法の大本を変えるような大幅な改憲案についての国民投票が行われ、大差で否決したばかりでした。
 その余韻がまだ残る中、与党・野党はじめ大学教授、憲法裁判所長官など多くの方に話を聞くことができました。
 今のイタリア憲法は1948年に施行されたもので、ムソリーニ独裁政権時代の反省に基づき、首相への権限集中を改める反ファシズム的な内容をもっています。ところが昨年秋に当時の与党・ベルルスコーニ政権が出した改憲案は、首相権限を強化し、議会の力を縮小するもので、憲法第二部「共和国の組織」の大部分を書き換える内容でした。国民の間には危機感が広がったといいます。
 国民投票は、改憲案を出した与党・ベルルスコーニ政権が四月に行われた総選挙で敗れるという政治的激動の直後に行われました。
 与党となったプローディ首相率いる与党連合は労組・民主団体とともに「憲法を守ろう委員会」をつくり、「首相権限の強化は戦前への逆戻り」「国民サービス切り捨ては許さない」というキャンペーンを展開しました。野党となった右派連合はベルルスコーニ前首相を先頭に、賛成投票を呼びかける委員会をつくり宣伝しました。
 結局、有権者の半数を超える53.6%が投票し、反対61.7%、賛成が38.5%と大差で否決されました。衝撃をもって受けとめられたといいます。
 最初に懇談したキーティ議会関係制度改革大臣の話は印象的でした。

議会の外で議論

 「イタリア国民は現行憲法を基本原則にしていくという選択をした。情勢に合わせて改憲することはありうるが、50項目という広範囲の改憲に国民のコンセンサス(合意)はないことを示した」
 「憲法改正については、議会の外で、文化人や、社会的レベルで忍耐強く広く議論されることが大事で、それが憲法問題での広い合意形成につながる」
 戦争の反省を踏まえたという点で日本の憲法と共通点があるのですが、憲法を大本から変えてしまうような改憲案にイタリア国民が「ノー」の審判を下したことに、私は深い感銘を覚えました。
 仮に議会で改憲派が多数を占めても、国民的な議論によってはこういう結果を示す---。日本で各地に広がる「9条の会」の取り組みに思いをはせ、私は草の根運動の広がりとその力に確信を強くしました。
 ヴィオランテ下院憲法委員会委員長と議会内の憲法委員会室で懇談する機会を得ました。
 私が自己紹介するとヴィオランテ氏は、「私も元共産党員。あなたとは共通するものがある」と笑顔を見せました。
 ヴィオランテ氏は、イタリア憲法には侵略戦争を放棄する規定(11条)があると説明。総選挙の後、現政権は、イラクでの戦争は国際法に反した戦争であり、イラク派兵は侵略への加担になるとして撤退を決めたと話してくれました。