新春てい談上

(「しんぶん赤旗」2009年1月6日付より)

   総選挙が行われる二〇〇九年は、ゆきづまりの自民党政治を大きく転換できるかどうか正念場の年です。日本共産党の笠井亮(東京)、塩川てつや(北関東)、はたの君枝(南関東)の三ブロック衆院比例候補が各界の市民とさまざまな課題について論じ合いました。


かさい・あきら 1952年10月生まれ。参院議員1期、05年9月から衆院議員1期。党中央委員、国際局次党中央委員、国際局次長

わたなべ・おさむ 1947年3月生まれ。一橋大大学院社会学研究科教授。憲法学、政治学、日本政治史専攻

   構造改革転換の年に

   ジレンマの麻生政権

  笠井    新年おめでとうございます。

  渡辺   おめでとうございます。

派遣切りを追及

笠井亮
衆議院議員(東京ブロック)
笠井亮さん(56)

   笠井    昨年十二月五日の衆院予算委員会で、コンピューター大手の日本IBMが正社員一千人を解雇する話を取り上げました。とにかくやり方がひどい。利益が一千億円から九百五十億円に5%減ったからといって、会社がいう業績が悪い社員を切っていく。「四十八時間以内に応じなければ即刻解雇する」と脅すやり方です。
 麻生首相は「派遣切り」が深刻とはいうが、大企業から献金を受けて至れり尽くせりやってきたため物がいえない。自動車主要十社で一万五千人を超える非正規労働者の解雇についてもトヨタがやったら各社が横並びです。働く人あってこそ利益をあげてきたのに真っ先に労働者から切る。それはダメだという政治の責任が国民から問われます。

  渡辺    産業界のトップは先頭になって構造改革を推進してきました。トヨタの奥田碩氏が日本経団連会長のとき小泉構造改革を進め、キヤノンの御手洗冨士夫氏があとを継いだ。そのトップ企業が率先して雇用の社会的責任に逆行する派遣切りを進めているところが大きな問題ですね。

   笠井    派遣労働の自由化と労働者を大量に路頭に迷わせる状況をつくったのは新自由主義路線や構造改革で、それが立ち行かなくなってきたことが誰の目にも見えてきました。世界でも日本でも、生きていくことを脅かす構造改革のゆきづまりがはっきりしてきた。

  渡辺    小泉政権のとき急進的に労働者のリストラと地方の切り捨て、社会保障切り捨ての三本柱をやり、大企業は競争力を高めてみぞうの利益をあげましたが、国民の側には餓死や自殺、ネットカフェ難民など他の先進国にないような矛盾が爆発している。構造改革の破たんが劇的な形で現れ、安倍、福田首相は政権を投げ出した。
 麻生首相が登場した最大の狙いは、構造改革の矛盾を何とか糊塗(こと)しながら継続することと、これまた挫折した改憲・自衛隊の海外派兵の強行という二つの課題を実行しようということでした。二つの政権の倒壊を受けて手直しせざるを得ないが、構造改革をやめて福祉の充実に転じることは財界が許さない。そのジレンマが麻生政権を揺らしています。
 派遣切りの問題では共産党が党首会談を申し入れ、麻生首相も雇用の維持をいわざるを得なかった。厚労省も非正規労働者の不適切な解雇を防止する通達を出した。しかし財政出動の財源は大企業から取れないので消費税増税しかいえません。
 誰が首相になっても財界の圧力で構造改革はやめられない。しかし今まで通りのやり方で政権は維持できない。政治を転換するのか、自公政権の居直りや構造改革の糊塗を許すのか、大きな分岐点になる年だと思います。


9条25条実現へ

   笠井    まったく同感です。私は一九九五年に参院議員になり、対決した内閣は村山、橋本、小渕、森、小泉、安倍、福田、麻生の八代。九〇年代後半から構造改革に反することをいえば時代に逆行するような風潮があった。しかし構造改革が人間らしい生き方に反すると渡辺先生も早くからいわれ、日本共産党は構造改革に反対を貫いてきました。
 昨年を象徴する漢字は「変」。政治や社会を変えたいと国民が願い、世界的にも新自由主義や構造改革を改める流れが強まっているのに、日本政府だけが思考停止状態で、暮らしや平和の問題で逆行する方向に突き進んでいるなかでの新しい年だと思うんですね。
 その意味で、今年は憲法九条と二五条を実現するたたかいが重要になっていると思います。昨年は生存権を問う生活保護裁判や後期高齢者医療制度の廃止を求める運動がありました。自公政権が構造改革を手直しするにしても、大企業中心主義と米国追随路線に出口はない。根本的転換の必要性が非常に分かりやすくなっています。

  渡辺    僕もかかわっている「九条の会」の運動が世論を動かし、安倍内閣がたくらんだ明文改憲をやめさせたことも大きい。会が各地で増えるに従い、改憲賛成の世論がどんどん減っていきました。
 憲法九条と二五条を日本社会のなかで実現する政治はいまだ完成していません。九条については自衛隊の武力行使を許していませんが、海外派兵恒久法による解釈改憲を阻むたたかいが重要です。二五条はさらに大きな運動が求められています。二五条の精神を実現するには生存権を具体化する法律を国会でつくる力が必要です。大きな力で政治を変えることが二五条を生かすのに必要だと自覚しなければなりません。


国民と連携強め

渡辺治
一橋大学教授  渡辺治さん(61)

   笠井    憲法守れの世論の草の根の広がりが直接的に政治に反映していると感じます。いま「こんなときに共産党がある」とちまたでも党の存在感が聞こえてきます。「蟹工船」もブームに。本当に頑張りどきです。その辺の値打ちと存在感を示し、変えようじゃないかという世論を広げたい。

  渡辺   共産党の役割が注目されるのは、反構造改革の見地から財源も含めて具体的な提案を出すからです。農業もつぶされていると認識されてきたが、ではどう再建するかが問われている。共産党はそういう問題について対案を出すので、自民党や民主党にも影響を与えています。これを政策の「つまみ食い」にとどめず、体系的に受け入れさせられるかが問われます。

   笠井   派遣切りの問題でも、志位委員長を先頭に国会議員団が論戦でただしながら企業や関係機関に申し入れ、そこで労組ができてたたかいが広がるという国民とのチームワークができました。その役割をもっと果たさなければいけません。
地球温暖化問題で欧州を調査し、日本の資本主義が突出して遅れていると感じました。米国いいなりと大企業中心主義の「二つの政治悪」が資本主義をルールなきものにし、温室効果ガス削減の足を引っ張る役割を果たした。この問題でも政治の転換を痛感します。

  渡辺   世界の新自由主義が大きな転換点を迎えているなかで、日本がその流れに貢献できるかどうか。そういう時代にきています。いろんなジグザクや逆流も起きますが、金融危機で多くの人たちが困難の打開を求めている。そういうなかで日本が新自由主義の転換を果たせるかどうかが問われています。

   笠井    国民の苦難あるところに日本共産党あり―これが私たちの立党の原点です。今年も大いに解決の展望を指し示す日本共産党ならではの役割を発揮したいと思います。

  渡辺   今後ともぜひ頑張ってください。

解説=新自由主義と構造改革
  経済や社会保障、労働、教育、行政機構などにわたって政府の機能を縮小し、規制緩和と市場原理万能を強めるというのが新自由主義です。財界が要求するこの考えに沿って、国民に痛みを強いる「構造改革」が進められました。