(2014年11月号前衛より)

原発再稼働ストップ、即時ゼロの決断を迫る

──安倍政権打倒の国民的大運動に合流するダイナミックなたたかいを (1)


笠井 亮
(衆院議員、党原発・エネルギー問題対策委員会責任者)

 安倍政権は、集団的自衛権、消費税大増税、原発の再稼働、沖縄新基地建設など、どの問題でも、国民の過半数が反対しているにもかかわらず、なりふりかまわず強権的な政治をおこなっています。これにたいして、国民から、「自分たちの思いと違う政治が一方的にすすめられている」「日本の政治が危険な方向に向かっている」などの声が上がり、安倍政権への危惧と批判、怒りが広がっています。

 国会のなかだけをみると、安倍政権は強そうに見えますが、むしろ国民多数の願いに逆らうことを強引にすすめる安倍政権と、国民との間の矛盾はますます大きくなり、彼らの側の方が一歩一歩追い詰められていくという、劇的な展開になっています。

 今秋から来年にかけての情勢の進展は、大激動を予感させるなか、安倍「亡国政治」にたいして世論と運動の側が大攻勢をかけるときです。日本共産党は、安倍政権打倒の国民的大運動をよびかけ国民的なたたかいをともにすすめ、来春のいっせい地方選挙戦、臨時国会、つづく通常国会の論戦でも大いに奮闘します。

一、川内原発の再稼働断念へ追い込む

 いうまでもなく原発問題での今秋の最大の焦点は、年末年始の強行がねらわれている鹿児島の九州電力原発の再稼働を断念に追い込むことです。

 九月一〇日に「審査書」を決定した原子力規制委員会は、川内原発の「安全性が確保された」といい、菅官房長官は「エネルギー基本計画に基づき、川内原発の再稼働を進めることといたしております」と応じました。安倍首相は、九月一九日の内外情勢調査会での講演で、原子力規制委員会について、「この二年間、粛々と、全く妥協することなく、科学的・技術的に、世界で最も厳しいレベルの規制基準を作り、そして、その基準に基づいて審査を進めてこられました」などと天まで持ち上げ、「その判断を尊重し、川内原発の再稼働を進めてまいります」と表明しました。

 しかし、彼らがいくら「安全」といっても世論は到底納得しません。矛盾はいよいよ激化するばかりです。

 規制委員会の「審査書」は、国民から一万七八一九通も寄せられたパブリック・コメントに示された国民の不安や疑問に一切答えていないのです。六二一カ所修正したというのですが、「影響を評価する」を「検討する」、「放射性物質を含む液体が溢れた」を「あふれでた」にするなど、形だけの字句微修正にすぎません。国民から意見を公募しておきながら、国民の真剣な疑問や不安を無視する態度に、いい加減にしろ≠ニ怒り心頭の声が噴出するのは当然です。この問題では、三つの点をあげることができます。


□ ずさんな重大事故・地震・火山対策、避難計画  

 第一に、近くに阿蘇、霧島、桜島などの一四の火山があり、大噴火した場合は火砕流などの影響が懸念されているのに、火山専門家からの度重なる警告も完全に無視していること、さらに重大事故対策、地震や避難計画など多くの課題にも、まともな対応がないことです。

 八月末に開かれた原発周辺の火山活動の監視に関する検討チームの初会合では、火山の専門家から批判や意見が噴出しています。石原和弘京都大学名誉教授は「GPS(全地球測位システム)と地震観測、監視カメラで噴火予知はできるというのは思い込み、俗説、誤解」と批判。中田節也東京大学教授は「巨大噴火の時期や規模を予測することは現在の火山学では極めて困難、無理」と断言するなどの指摘が相次ぎました。

 火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣東京大学名誉教授は、川内原発の適合性審査において、巨大噴火によって同原発に「影響を及ぼす可能性は十分小さい」とするなどの根拠の一つになったフランスの研究者の論文について、「論文の著者にメールで確認したが、『あくまでギリシャの一火山での研究結果であり、ほかの場所に当てはめられない』と困惑していた」と紹介、「火山リスクが低いという規制委の判断は科学的根拠に基づいていない」「規制委が『科学技術に基づいて判断した』というのは心外だ」ときわめて厳しく指摘しています(「東京」九月一一日付)。

 重大事故対策についても、「手抜き審査」であることが、「しんぶん赤旗」の告発と国会論戦のなかで明らかになっています。東京電力福島第一原発事故以前は、原発の設置・変更許可申請の審査で、電力事業者が提出した解析結果を規制当局が同じ条件で異なる解析ソフトを使う独自解析(クロスチェック解析)を実施していました。ところが、福島事故後の「新規制基準」が過酷事故を含む重大事故の対策を義務づけたのに、その対策が有効かどうかの審査の際、事業者の解析結果をうのみにして、独自解析をおこなっていないことが判明したのです。

 この問題を八月七日の衆院原子力問題調査特別委員会で私が追及したのにたいして、田中規制委員長は、「クロスチェックはきちっとやらせていただいております」などと虚偽答弁までおこないました。いかにずさんな審査かです。  避難計画はどうでしょうか。原子力規制委員会は、避難計画を「審査書」の対象外にする無責任ぶりです。川内原発の三〇キロ圏内には約二三万人の住民が暮らしています。原発の過酷事故が起これば二〇分前後には「メルトダウン」が始まり、一時間半前後で「格納容器からの放射能漏洩」が始まるといわれています。この限られた時間のなかでどのように避難するというのか。しかも、現在の「避難計画」では地震や噴火などが同時に発生する多重災害の場合など十分考慮されていない、机上の計画≠ナしかありません。

 もっとも重大なのは、高齢者や身体障害者、妊婦、乳幼児などの要援護者をどうするかです。川内原発の三〇キロ圏内には、二三〇もの福祉施設がありますが、ここにいる人たちの避難方法、介護や医療、それ以外の在宅の要援護者はどうするかなどは、置き去りにされたままです。

 政府の原子力防災会議(議長=安倍晋三首相)は九月一二日、川内原発の三〇キロ圏内にある九市町の「避難計画」を了承し、“お墨つき”を与えてしまいました。「避難計画」を自治体まかせにする政府の無責任な態度に批判が高まり、あわてて担当者を派遣することにし、内閣府に原子力防災の専従部門を設置して支援することを決めましたが、実際には、まともな計画をつくりようがないのが現実です。国が責任を持つといった途端に、「避難計画ができないから再稼働はできない」となってしまいます。だから、政府はあくまで「支援」するだけで責任をもとうとしないのです。

 原子力規制委員会は、「審査書」への意見公募で「科学的・技術的意見」をもとめていましたが、これほど非科学的な審査はありません。住民の命と安全より再稼働ありきの決定は直ちに撤回すべきです。


□「世界最高水準」でも「安全」でもない

 第二に、もともと「新規制基準」自体が、安倍政権が繰り返すような「世界最高水準」でもなく、田中規制委員長の国会答弁いわく、川内原発の「世界最高水準の安全性は担保された」(二〇一四年八月七日、衆院原子力問題調査特別委員会)など、とても言える代物ではないことです。

 この「基準」には、いまだ未解明の福島第一原発事故の教訓は反映されておらず、EUで採用されている、核燃料溶融時の対応設備や格納容器の強度、電源系統の独立性などの重要事項について盛り込まれてはいません。これで安倍首相が繰り返していう「世界最高水準」など到底いえないものです。

 しかも、防衛省が国会答弁で、愛媛県の四国電力伊方原発の上を軍用機が飛んだと認めており、自衛隊や米軍機の事故が頻発しているのに、「基準」には、航空機衝突に備えて原発の格納容器を二重にするなどの備えはありません。まして米軍機が全国で傍若無人に低空飛行訓練をおこない、玄海原発のある佐賀県にオスプレイの大量配備が計画されているのですから、その危険ははかりしれません。

 六月七日の国会で、欧州基準にも満たないとの追及に対し、田中規制委員長は、「一点の曇りもなく世界最高水準とはいっていない」などと言い逃れしましたが、一点でも曇りがあったら再稼働できない、これこそ福島原発事故の最大の教訓ではありませんか。「新規制基準」に「合格」したからと再稼働を強行し、今後の審査のひな型≠ノしていくことは、新たな「安全神話」をふりまくものにほかなりません。


□原発稼働ゼロをつくりだした世論と安倍政権の焦り

 第三に、これほどまで、なりふり構わず再稼働に突き進もうとするのは、安倍政権の深刻な焦りのあらわれにほかなりません。

 「再稼働を許すな」、「原発ゼロの日本を」──官邸前行動や節々の大集会、そして全国各地の草の根で、私たちもともに声をあげてきましたが、この三年半にわたる粘り強い運動が大きく広がり、国民世論の「原発はなくしてほしい」という圧倒的な状況をつくってきました。こうしたなかで、二〇一四年、今年の夏は、一九六六年に日本で初めて商業用原発として東海原発が運転を開始して以来、四八年ぶりに「原発稼働ゼロ」という歴史的な夏となりました。「稼働ゼロ」でも電力は足りている、ならば原発はいらない、再稼働も必要なし、ということが証明されました。国内で再稼働できなければ、原発輸出も成り立たちません。

 原発推進勢力は、この事態をまさに恐れてきました。だからこそ、政府は、審査が「遅すぎる」と口を出してきただけでなく、原発事業者・財界などの要求に従って原発再稼働・推進政策をすすめる立場から、規制委員会の新たな委員の人事を強行しました。首相みずから、九州電力会長、九州経済連合会会長らの財界に「何とかします」と約束したのも、焦りのあらわれです。  菅官房長官は「川内が進めばほかはスムーズ。同型炉は審査簡略化可能」と述べるなど、あくまで全国で再稼働の動きを強めようとしています。しかし、強引にやればやるほど、安倍政権は墓穴を掘ることになるでしょう。「再稼働はダメ」という世論と運動が追い詰めている、ここに確信を持って、攻勢的にとりくむとき、それがいまです。